義実家への絶縁状、気持ちの整理をつける死後離婚

「もし夫が先に亡くなったら義理の両親とは他人。介護まで期待されたくない。」

なにかと折り合いが悪くなることも多い義理の親との関係を、簡単な手続きで解消できるのが「死後離婚」です。

この記事では、死後離婚のメリットや注意点、手続き方法や実際の体験談などを集めました。

家制度に縛られることなく、個人の人生を歩みたいと思う人はぜひ読んでみてください。


通称「死後離婚」と言われる「姻族関係終了届」

配偶者が亡くなったあと、義実家と縁を切り他人に戻る手続きを通称「死後離婚」といいます。

正式には「婚姻関係終了届」という書類を役所に提出することを指します。

婚姻関係終了届の提出数は近年増加傾向にあり、2015年には2,783件提出されました。



多くは夫を亡くした妻が提出することが多く、逆のパターンはあまりありません。

その背景には、家制度から求められてきた女性の役割から自由になり、自分の人生を歩みたいという女性の願いがありました。


嫁のつとめやしがらみから自由に

死後離婚を希望する理由として多いのは「夫と一緒、嫁ぎ先の墓に入りたくない」「夫の親の介護はしたくない」という意見です。

時代の移り変わりとともに結婚は個人の結びつきになり、女性が○○家に嫁ぐという意識は薄くなりました。

「嫁ぎ先を自分の家だと思え」という時代は過ぎ、あくまでも「義理の」「旦那の」実家というスタンスで付き合うことが多い現代。

嫁姑が同じ屋根の下に暮らすことも少なくなり、干渉しないのが円満のコツ。というのを実感する人も多いのではないでしょうか。

個人の生き方を尊重する時代の変化ももちろんですが、精神的な苦痛を受けた場合に死後離婚を考えるケースが多いようです。

死後離婚を希望するケース
  • 夫との関係が悪かったが、生活のために我慢していた
  • 夫の親や親戚からいじめを受けるなど、折り合いが悪かった

死後離婚を選ぶ人は、夫やその家族から精神的に追い詰められたという経験をしています。

昔は再婚して籍を抜くしか夫の親族との縁を切ることはできませんでした。

しかし戦後の民法では個人の自由が認められ、義理の両親を扶養する義務はなくなりました。
(※扶養義務は原則として直系血族と兄弟姉妹にあり、特別な事情がないかぎり妻は義務を負いません。)

ところが親世代は依然として「嫁は親の世話をするもの」という意識がそのままあるため、届けを出してきっぱりと線引きをする人が増えています。


財産分与の権利はそのままに残る

死後離婚の手続きをすることで生じるデメリットは実はほとんどありません。

手続き後も相続人としての権利は変わらず、配偶者の財産や遺族年金ももらうことができます。

また義理の両親の財産分与でも、嫁(息子の妻)や孫(息子の子ども)は元々相続人ではありませんので、死後離婚によって不利になるということはありません。

マイナスの財産、借金もそのまま
相続はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産もあわせて受け継ぎます。

借金や連帯保証人になっているなど、マイナスの財産が多く相続放棄をしなければならない場合は死後離婚のメリットは少なくなります。

その場合は生前に離婚すると、相続の権利はありませんがその分早く自由になることができます。


子どもと祖父母の血縁関係は切れない

義理の親子の縁は切ることができますが、祖父母と孫の血縁関係を切ることはできません。

親族とのかかわり合いが生じる場面では、肩身が狭い思いを覚悟する必要があります。

例えば配偶者の法事に参加できなくなったり、別々に行う必要も出てくるかもしれません。

相続に関して、孫は祖父母の直接の法定相続人ではありませんが、父親が祖父母より先に亡くなっている場合は孫に相続権が移ります。

円満な関係であれば孫が相続することに親族の反対はないでしょうが、死後離婚によって感情面でトラブルになる可能性は高まります。

しかし、トラブルになったとしても権利は変わりませんので、相続放棄することも相続することも選べます。


戸籍の扱いはそのまま、名字も変わらない

婚姻関係終了届を出すと、本人の戸籍にだけ「親族との姻族関係は終了」と記載されます。

婚姻関係終了届の見本


戸籍の扱いや姓が変わることはなく、子どもの戸籍についても全く影響はありません。

結婚前の姓に戻したいという場合は「復氏届」という手続きで行うことができますが、子どもがいる場合は親子の姓が異なるため注意が必要です。

もっとも、子どもが成人したり、結婚して姓が変わっている場合はそれほど気にする必要はないかもしれません。

再婚したときに支障はない?


配偶者が亡くなった後に再婚する場合、元夫の親族と、現夫の親族の両方との姻族関係が続くことになります。

それによって生じるデメリットはあまりありませんが、姻族関係終了届を出すことで万が一生じた場合の扶養義務を回避することができます。

ただ、届けを出すことはいつでもできて期限もないため、再婚と同時に出す必要はそれほどありません。



デメリットは倫理観や世間体

義実家との縁を切れば当然親族の間では「ひどい嫁だ」という非難があるでしょうし、経済的な支援を受けていた場合はそれもなくなります。

注意点としては自分のお墓を用意する必要があることと、義理の親と子ども(祖父母と孫)の血縁関係は続くことです。

子どもが引き続き夫の親族との関わる必要がある場合は、子どもにもきちんと説明して了承を得ておくほうがいいでしょう。

また、二世帯同居の場合は自分か親のどちらかが出ていかなければいけないので、住まいの確保や説得が必要になります。

一度手続きを行うと、もう一度復縁したいと思った場合には養子縁組が必要になります。

取り消し手続きはできませんので、慎重に選択する必要があります。


手続きは自分ひとりで完結できる

死後離婚の手続きは非常に手軽で、本人による届けの記入と押印、戸籍謄本があれば受理されます。

役所の窓口では本人確認と、配偶者の死亡証明として戸籍を確認するだけ。

配偶者の親族の了承や押印はいりません。

たとえ親族が反発したとしても問題なく受理され、義理の親に黙って出すことも可能です。

戸籍への記載は提出した本人の戸籍に記載されるだけで、夫の親族へ通知が行くこともありません。

つまり相手方が戸籍を取るまで知られないということです。

好きなときにいつでも出せる
姻族関係終了届は「配偶者の死後○日以内」など、期限の縛りがありません。

そのため自分のタイミングで出すことができ、まさに最後の切り札としての心の支えにすることができます。


実践した人の体験談

これで縁を切れると思うと気持ちが晴れ晴れ、前向きに



気づかれずに手続きできて、気持ちが楽に



義実家との関係が悪く届けを出した場合は、気持ちに整理がつき新しい一歩を踏み出せるという意見が多く見られました。

また、若くして配偶者を亡くした場合は、義理の両親から姻族関係終了届を提案されたという人も。

義理の実家からのやさしさで



子どもとして死後離婚を体験した人は、いきなり祖父母と会えなくなり傷ついたという意見もありました。

義理の実家からのやさしさで



死後離婚は賛否両論ですが、配偶者が亡くなれば家に縛られることなく、個人の自由が守れるという点では女性にとって安心な制度です。

姻族関係終了届の手続きは非常に手軽な反面、取り消し手続きというものはできません。

当人同士だけの関係で進めるのではなく、子どもがいる場合はその影響も考えしっかりと親子で話しあうことで、後悔のない選択をすることができます。


気持ちの整理をつけて第二の人生を

夫の親族から自由になれるということは、嫁としてついて回る役割から開放され、自分の人生を生きる道が開けるということです。

もう一度仕事をしても良いし、新しい土地に移ったり、再婚することも自由。

夫の親との関係を解消しても、夫の妻だったという事実は変わらず残り、戸籍や姓もそのまま使うことも自由です。

義理の親への扶養義務はないとは言え、まだまだ嫁のつとめを期待される現代。

このような制度を知っておくことで、いざという時の切り札ができ気持ちも軽くなるのではないでしょうか。